補聴器豆知識~夏の補聴器取り扱いのコツ
人間のきこえは、1日中同じものでないことはご存じでしょうか。
きこえは気温や気圧の変化に影響を受けやすい感覚です。そしてもうひとつの耳のようにはたらく補聴器も、その性能を十分発揮するためには、季節や気温によって取り扱い方を工夫する必要があることは意外と知られていません。
特に、暑さが厳しくなる夏は、汗や湿気による補聴器への影響が出やすい季節です。
暑い夏でも快適に補聴器を使いこなすためにできる工夫についてご紹介します。
補聴器故障の原因の多くは汗や湿気
補聴器は基本的な装用動作で故障することはそれほど多くはありません。故障や不調を引き起こす原因の多くは、汗や湿気によるものです。
耳にかけたり耳の中に入れて装用する補聴器は、どうしても湿気にさらされる状態になります。気温が上がり汗をかきやすくなる季節には、補聴器と汗の水分とが直接触れてしまうことが多くなり、そのため故障の原因となりやすいのです。
補聴器の故障が梅雨ごろから秋口に起こりやすいのもこのためです。
補聴器の防水仕様の進化と注意点
補聴器と汗や湿気の問題は切っては切れないものとはいえ、なんの対応もされていないわけではありません。最近の補聴器は防水への対応が進化しています。
補聴器本体や重要な部品はナノコートという特殊なコーティングを施され、汗や湿気によるダメージを軽減しています。
さらに、国際保護等級IP68※(IP規格の最高等級)を取得している器種もあります。
※ 国際電気標準会議(IEC)が定めた、電子機器の防塵・防水性能を示す規格
IP68は補聴器以外にもスマートフォンやスマートウォッチ、カメラ等、幅広い機器に普及していますが、どの機器にも共通して言えることは「規格を採用しているからといって、どのような環境にも耐えられるわけではない」ということです。
特に湿った空気は水よりも機器内部に侵入しやすい性質があり、予期せぬ結露を発生してしまう場合があります。
また、水没試験は真水、常温で評価されるため、塩分を含む汗や高温下での使用では同様の防水効果を得られない可能性があります。
防水仕様に加えて、汗や湿気から補聴器をなるべくガードできるよう、使い方やお手入れ方法を工夫することが必要となります。
補聴器にやさしいメンテナンス 3ステップ
1.耳も補聴器もこまめに拭いて、汗が入らないようにする
一番は、補聴器に汗が入らないようにすることです。
耳には補聴器だけでなくメガネやマスクも乗っていることがあり、気づかないうちに汗をかいているものです。汗をかきやすい人はタオルやハンカチで意識的に耳の周りを拭くとよいでしょう。
合わせて、補聴器もティッシュペーパーや柔らかく乾いた布で拭きます。一日の終わりには補聴器をしっかり拭くことを習慣づけるとよいでしょう。
汗や皮脂によるベタつきが気になる場合は、専用のクリーナーシートやアルコールを軽く含ませたコットンでやさしく拭きます。補聴器やイヤモールド、耳せんを汚れたまま放置することにより雑菌が繁殖し、かゆみを引き起こす場合もあるため、補聴器を長時間装用する方は特に気をつけましょう。
充電式の補聴器を使用している方は、充電端子も忘れずに拭きます。
拭き方のコツは、強い力ではなく、やさしく拭くことです。ウエットティッシュや洗剤などは使用できません。
2.夜は乾燥ケースに入れる
1日装用した補聴器には湿気が溜まっています。補聴器を外したら専用の「乾燥ケース」に入れて、ひと晩乾燥させましょう。
補聴器を使わないときも、同様に乾燥ケースに入れておきます。
補聴器を乾燥ケースに入れる際には、電池を取り出します。空気電池は乾燥が苦手なため、電池を一緒に入れてしまうとで電池の消耗を早めてしまうことになります。
また、内部の端子まで乾燥しやすいように、バッテリーケース(電池の収納部分)のふたを開けたままケースに入れてください。
乾燥ケースのシリカゲルは乾燥させるたびに除湿力が低下していくため、交換が必要となります。再利用はできませんのでご注意ください。
3.定期的に補聴器店でメンテナンスする
日々のお手入れにプラスして定期的に店舗でメンテナンスを受けましょう。
補聴器専門店では専用の機器を使用し、補聴器をしっかりと乾燥させ、清潔にクリーニングすることができます。
汗による水ぬれや耳垢づまりは、急に音が出なくなるなどのトラブルを引き起こします。放置すると修理が難しくなる場合もあります。
当店ではおよそ3ヵ月ごとにメンテナンスを行い、補聴器の状態を確認しています。使用頻度やお耳の状態、特に耳垢が出やすい、汗をかきやすい、などの体質による補聴器の状態への影響もあるため、気になる方はお気軽にご来店ください。
自宅でできる補聴器のお手入れ
1.本格的な乾燥・除菌ができるアクセサリー
最近では、自宅でも補聴器をしっかりとお手入れができるようなアイテムが販売されています。乾燥と同時にUV照射による除菌が可能で、よりしっかりと補聴器を乾燥させ、清潔に保つことができます。
2.日常的に使用したいお掃除グッズ
簡単なお手入れでも、日常的に行うことにより汚れや水分の蓄積を防ぐことができます。
耳垢やホコリを払う補聴器用のブラシや、水分や汗などを吹き飛ばすことができるエアブロワー、補聴器やイヤモールド用のクリーナーなどがあります。
また、耳あなタイプ補聴器には、音の出口に耳垢が詰まることを防止する「耳垢防止フィルター(ワックスガード)」というものがあります。
ご自身で定期的に交換していただくことにより、補聴器のレシーバーを守ることができます。
補聴器が濡れてしまったら
予期せぬアクシデントで補聴器が濡れてしまうことがあります。
急な天気の変化で外出先で大雨に合い補聴器が濡れてしまった、という場合や、補聴器を着けていることを忘れてシャワーを浴びてしまった、という場合もあります。
まずは補聴器から水分を取ることが必須です。落ち着いて対処しましょう。
○充電式補聴器の場合、特に端子の部分をしっかりと拭く
○電池式補聴器の場合、電池を取り出し、バッテリーケース(電池の収納部分)も拭く
○バッテリーケースのふたを開けたまま乾燥ケースや乾燥機器に入れ、乾燥させる
自宅でできるケアでは取り切れない水分が残っている可能性もあります。
お気軽に補聴器専門店にご相談ください。
補聴器豆知識~夏の補聴器取り扱いのコツ◆まとめ
汗や湿気による補聴器のダメージを防ぐためには、自宅での日常的な補聴器のお手入れと専門店での定期的なメンテナンスの2つが重要となります。
特に汗をかきやすい夏は、習慣化したお手入れで、汚れや水分を溜めないようにすることを意識してみましょう。
投稿者プロフィール
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認定補聴器技能者。30年に渡る補聴器メーカー勤務の経験をもとに、『距離も気持ちも近くて安心、信頼できる補聴器専門店』
として、住吉大社のほど近く、粉浜商店街にある補聴器専門店として日々精進しております。趣味はクラシックギター、特技は書道。
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