補聴器豆知識~冬の補聴器取り扱いのコツ

毎日着ける補聴器だからこそ、大切に長く使いたいもの。
補聴器を快適に長くお使いいただくために、上手な使い方のコツがあることをご存じでしょうか。
それは、季節に合わせて補聴器の扱い方を変えることです。
人と同じく、実は、補聴器や電池も極端に低い温度下や気温差により、本来のはたらきが鈍くなったり、予期せぬ症状が発生したりすることがあります。
寒さが厳しくなる冬場の補聴器装用において、重要となるポイントをご紹介いたします。

冬場の電池の上手な使い方

補聴器専用の空気電池は、使い始めにシールをはがすことにより穴から空気を取り入れて放電が始まります。
電池は化学物質で構成されているため、一般的に寒いと活動が鈍り、暖かいと活発になります。そのため、電池寿命が短くなる原因には、環境温度が大きく関係します。
冬場は、低温・乾燥・暖房による二酸化炭素の濃度増などの影響により、電池の電圧が低下したり、不安定になります。

①開封時に少し長く待つ

通常、使い始めに保護シールをはがして1分程度で使えますが、寒いところでは反応が遅くなります。シールをはがした直後は電圧が上がりきっていないので、少し長めに待ってから補聴器に入れましょう。

②手で温めてから使う

就寝時は部屋の温度も下がり、電池の電圧も低下しています。朝補聴器に電池を入れる前に、手で電池を温める習慣をつけましょう。

③保管場所、保管方法に注意

換気のよい常温(冬場は暖かい部屋)で保管し、乾燥器や乾燥ケースに入れないようにしましょう。
また、補聴器に電池を入れたまま乾燥ケースに入れてしまうと、電池寿命は54%~65%※(シールをはがした状態で乾燥ケースに12時間保管した場合)に短縮します。
補聴器を乾燥ケースに入れる際は、電池を取り出し、電池ドアを開けて保管するようにしましょう。
※データ出所:一般社団法人電池工業会

④換気をこまめに行う

石油、ガスのファンヒーターやストーブなどの暖房機器を使用すると、空気中の二酸化炭素濃度が増加により、空気電池本来の電池寿命よりも消耗が早くなってしまいます。換気を十分に行わない場合、電池寿命は64%~77%※程度短くなります。室内の換気をこまめに行うことが大切です。

⑤充電式補聴器について

充電式補聴器は、リチウムイオン電池を使用しているため、暖房機器から発生する二酸化炭素による電池消耗の影響は受けません。
しかし、10℃以下になるような寒い場所では、リチウムイオン電池のプラス極とマイナス極の電気の通り道の役目をしている電解液の働きが悪くなり、充電や放電がスムーズに行えなくなる場合があります。
充電する場合は、玄関や窓際、洗面所など寒い場所で行うのではなく、暖かい室内で行うようにしましょう。

補聴器の結露に注意

冬場のトラブルでよくあるのが、「電池を入れたばかりなのに急に音が出なくなった」というもの。温度差によって補聴器のチューブや内部に発生した結露が原因であることが多いです。
特に耳かけ型補聴器のチューブ内が結露して水滴が溜まりやすく、水の膜ができてしまうとチューブ内を音が通らなくなるため、「音が出ない、音が小さい、ボワンとこもった感じ」というような症状が出てしまいます。
補聴器を装着していると、チューブ内部の空気は体温により温まります。それにより外気との温度差が生じ結露が発生してしまいます。
結露の発生には個人差がありますが、

・体温が高い方
・温度差がある環境を行き来する方
・耳栓やイヤモールドの密閉率が高い方

は、結露が発生しやすい可能性があります。

補聴器を寒さから保護する

結露対策として、チューブ内に木綿糸を通しておく、という方法もありますが、最も効果的な予防対策は「温度差を発生させない」ことです。
暖かい場所と寒い場所との移動の際、なるべく温度差が発生しないように、外出する際は帽子やマフラーなどを使用して、耳と補聴器の両方を冷たい外気から保護するようにしましょう。
また、日頃から補聴器用の乾燥機を使用することもおすすめです。補聴器乾燥機にはUV除菌機能がついているものもありますので、毎日少しの時間で除菌でき、補聴器をより清潔に使っていただくことができます。乾燥機以外にも、補聴器専用のクリーニングシート等、補聴器お手入れ用のグッズを豊富に取り揃えていますので、ぜひご確認ください。

パーフェクトドライラックス ¥9,900(税込)
UV除菌に加えて、30分で乾燥できる急速ファン乾燥機能付き。
お出かけ前や帰宅後のちょっとした時間でも使えます。

クリーニングシート ¥9,900(税込)
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アルコール除菌でさっときれいにお手入れ可能。
外出時の携帯にも便利です。

静電気にも気を付けましょう

寒い時期は空気が乾燥し、静電気が発生しやすくなります。静電気は小さいゴミや埃を吸い寄せて、マイクにくっついてしまうと音を正確に拾うことができなくなり、聞こえが悪くなります。また外部からの大きな電圧がかかる静電気は、器械に衝撃を与え、補聴器が壊れてしまうこともあります。
補聴器専用のクリーニングシートでこまめに拭いたり、部屋を適切な湿度に加湿したりすると静電気が発生しにくくなります。

冬の補聴器の取り扱い◆まとめ

補聴器を寒さから守り、耳の健康を保つため、室内と室外でそれぞれの対策を取ることが大切になります。

〇電池取り扱いのコツ

①開封時に少し長く待つ
②手で温めてから使う
③暖かい室内で保管し、乾燥器や乾燥ケースに入れない
④換気をこまめに行う
⑤充電式補聴器の場合、充電は暖かい場所で行う

〇結露対策

①帽子やマフラーなどを使用して、耳と補聴器の両方を冷たい外気から保護する
②乾燥機や乾燥ケースを使う

〇静電気対策

①補聴器専用のクリーニングシートで拭く
②部屋を適切な湿度に加湿する

そもそも、耳という器官自体が気温の影響を受けやすいものです。体の他の部分とは異なり、耳には暖かく保つための脂肪層がないからです。寒いところへ行くと耳がまず冷える、ということは、誰しもご経験のことではないでしょうか。
寒さによる血流の悪化で生じる一般的な症状は、耳鳴り、耳垢の蓄積、むくみなどがあります。また寒い時期は一年の中でも一般的に体調を崩しやすい時期であり、風邪やインフルエンザなどが増え、急性中耳炎を引き起こすこともあり、すでに難聴の症状がある方は、悪化する恐れもあります。体を温める食事や十分な睡眠をとる、気温差のないよう体を暖かく保温する、など体調を整えることも大切となります。

投稿者プロフィール

髙橋 義和
髙橋 義和
認定補聴器技能者。30年に渡る補聴器メーカー勤務の経験をもとに、『距離も気持ちも近くて安心、信頼できる補聴器専門店』
として、住吉大社のほど近く、粉浜商店街にある補聴器専門店として日々精進しております。趣味はクラシックギター、特技は書道。