補聴器の価格差、違いはなに?

補聴器装用を考え始めるときに、CMや広告で見聞きしていた価格と違う、とびっくりしたことはないでしょうか。
実際に補聴器の価格差は非常に大きく、通信販売で千円単位で気軽に購入できるもの(集音器)から、両耳装用で100万円を超えるハイクラスのものまで、幅広く販売されています。そうなると、その価格の違いとは何か、気になってくるのが当然のところ。

ご予算の中でご自身のきこえに合う補聴器を選ぶために、それぞれの価格帯の補聴器の機能の違いはもちろん、「補聴器」と「似ているけれど補聴器ではないもの」という製品自体の違いも併せて、価格帯ごとにご説明します。

※補聴器の価格は2023年7月現在のものです
※補聴器は非課税です

補聴器の価格帯について

〇5,000~15,000円の補聴器(集音器)

CMや新聞広告の通信販売で見かけることが多いこの価格帯の補聴器。
実はこの価格帯のものは、よく見ると「補聴器」ではなく「集音器」「助聴器」であることがほとんどです。

「補聴器」という名称で販売されている製品は、補聴器メーカーが厚生労働省に申請し、厚生労働省から正式に医療機器として認定されているものだけです。薬事法で定められた管理医療機器として指定されているため、さまざまな制約や条件の下で製造・販売されています。
また、補聴器はきこえが難しくなった人や不自由な人が使用することを前提に開発・製造されています。例えば、騒音の中で言葉を聞き取りやすくする機能や、必要以上に大きな音を出して耳を傷めることのないよう出力を制限できる機能、ハウリングを防止する機能など、装用する人のきこえに配慮した機能が搭載されています。

一方、「集音器」「助聴器」は、医療機器ではないため、製造や販売する上での制約はなく、難聴の人を前提としたさまざまな機能は搭載されていません。基本的には音を増幅する機能を中心に広く一般向けに販売されている製品となります。

ポイント

「補聴器」は厚生労働省から正式に医療機器として認定されている
補聴器と似ている「集音器」「助聴器」は医療機器ではなく、分類上異なる製品である

◎メリット

・店に行かずに手軽に購入できる
・価格が安い

×デメリット

・音量以外の調整ができない
・既製品のため、製品の形や音質が合わないことがある
・ハウリング(ピーピー音)や雑音がうるさいことがある

□こんな方に

・一時的に使いたい方
・とにかく音を大きくききたい方
・出費を抑えたい方

〇15,000~50,000円(片耳)の補聴器

この価格帯になると「補聴器」として認定されたものが販売されています。
「補聴器」と「集音器」「助聴器」の違いをクリアしたこの価格帯でも、補聴器とは耳元で音を大きくするための器械だと認識されていることが多いです。
眼鏡と同じように、補聴器をかけるとすぐ音が出てきこえがよくなる、と思われがちですが、補聴器の役割は、入ってきた音を「きこえに合わせた音に加工し、ききやすい音にして」出す、ということです。単に音を増幅して出す器械ではありません。

通信販売や家電量販店にて購入が可能ですが、「集音器」「助聴器」と同じく既製品のため、購入前のカウンセリングや聴力測定などの検査や、購入後の調整や点検など、という、それぞれのきこえに合わせた対応はありません。
補聴器装用できこえをよくしていくためには、きこえの状況を調べ、結果に合わせて補聴器を調整し、音量調節や雑音抑制などの機能を活用することが必須となってきます。そういった面でも価格相応となっているので、このあたりを割り切ると、便利に装用できるかもしれません。

ポイント

「補聴器」ではあっても既製品であるため、購入前・購入後の対応・調整がない
機能面では価格相応のため、割り切って購入を考えたほうがよい

◎メリット

・お店に行かずに手軽に購入できる
・比較的購入しやすい価格
・ハウリング(ピーピー音)を抑制する機能がついたものもある
・雑音を制御し、ききたい音や会話をきき取りやすくするものもある

×デメリット

・購入後、きこえがいまひとつでも調整ができない
・既製品のため、製品の形や耳せん、音質が合わないことがある
・補聴器の装用効果が客観的に分かりにくい
・ハウリング抑制、雑音抑制の機能が物足りない

□こんな方に

・時間があまりなく、すぐに補聴器がほしい方
・難聴の程度が軽い方
・取扱説明書をご自身で読みながら設定ができる方

〇50,000~100,000円(片耳)の補聴器

専門店のサービスが受けられる中では、もっともお買い求めいただきやすい価格帯の補聴器です。
店ごとに取り扱いメーカーが異なる可能性はありますが、メーカーによる価格の違いはほとんどありません。補聴器の価格差は一貫して製品としての機能や性能の違いとなっています。
購入前にカウンセリングや聴力測定、きき取りの検査を行い、ご自身のきこえに合った補聴器を試聴してから購入します。購入後も、生活スタイルに合わせて補聴器を調整していくことができます。

ポイント

きこえの状況を調べてから補聴器を試聴し、購入できる
購入後も補聴器の調整ができ、定期的な点検で補聴器をケアできる

◎メリット

・試聴することにより、じっくりと補聴器に慣れていける
・補聴器の装用効果を客観的に理解することができる
・ハウリング(ピーピー音)抑制や雑音抑制のような基本的な機能が備わっている

×デメリット

・周囲の環境により、音量の調節や音質の切り替えを自分でする場合もある
・補聴器の調整項目が少ないので、試聴時に雑音が気にならないか確認する必要がある

□こんな方に

・主に家の中など静かな環境で装用する方
・家の中での会話やテレビの音をききたい方

◆ワイデックス MAGNIFY 30 [MO3] BTE 312 [MBB2]¥98,000

〇100,000~300,000円(片耳)の補聴器

専門店でお買い求めいただくことが多い価格帯になります。
この価格帯になると、ハウリング抑制や雑音抑制の機能が大幅に強化され、様々な機能が加わります。
いわば旧型モデルのような、発売当時に最高機種であった性能を備えつつ、比較的お求めやすさも実現している価格帯となります。
また、アクセサリー(周辺機器)やスマートフォンアプリと組み合わせて装用することで、より生活スタイルに合ったきこえを目指すこともできます。

ポイント

性能とお買い求めやすさのバランスが取れた価格帯
機能的にも充実し、より生活スタイルに合わせた装用が可能

◎メリット

・より雑音が静か
・補聴器が周囲の音環境を感知し、自動で音を調節する
・アクセサリーやスマートフォンアプリを利用して、テレビや携帯電話のきき取りをよくするものもある

×デメリット

・これまでの価格帯と比べて高い
・付加機能を使いこなすためには多少の慣れや知識が必要

□こんな方に

・旅行や仕事、ご友人とのお付き合いなど、活動的に動いておられる方
・騒がしい場所で話を聞く機会がある方
・新しいものを取り入れることに抵抗のない方

◆ワイデックス MOMENT 220 RIC10 [MRB0] ¥260,000

〇300,000~500,000円(片耳)程度

最新の技術を用いて開発されたハイエンドクラスの補聴器です。
音の高速処理やチャンネル数※、AI機能など、より自然な音を目指して補聴器ができることすべてがこの器械につまっているといえます。

※「補聴器に入ってくる音を何分割にして処理を行っているか」を表す数
数値が高くなるほど細かく分けて再現するため、音のひずみが小さくなり、より自然で滑らかなきこえになります

ポイント

高度な最先端技術により開発された最高クラスの補聴器
きこえに対して補聴器ができる限界の機能・性能を搭載している

◎メリット

・音質が非常に良く使いやすさもベスト
・周囲の音環境を判断し、全て自動で細かく音が調節される
・修理保証や紛失保証の期間が長い

×デメリット

・価格が高い

□こんな方に

・より良いきこえにこだわる方
・職場や会合など、重要な会話をする場面が多い方
・ご自身で補聴器の音量調節や音質を変えることなく自動で音をききたい方
・せっかく購入するならば、最高品質・最先端の補聴器にしたい方

◆シグニア 5AX Pure 312 AX ¥410,000

補聴器の価格差、違い◆まとめ

補聴器の価格差について、製品の違いも併せてご説明してきました。
開発時期や搭載された技術の違いにより価格差が生じる、ということがお分かりいただけたでしょうか。

補聴器の価格について、「昔より高くなった」と言われることがありますが、物価やコストの上昇といった事由をのぞくと、実は補聴器自体の価格はそれほど変わってはいません。
高くなった、と思われる理由として、1996年にフルデジタル補聴器が発売されて以降、およそ30年間で驚くほどの進化を遂げたことにあります。つまり、現在の補聴器は以前の補聴器に比べて格段に小さく、高機能・高品質になっている、ということであり、技術の普及により価格が下がった面さえあります。よって、様々な機能を持った補聴器を幅広い価格帯から選択することが可能になっているのです。

基本的に高価な補聴器は機能や性能がより充実していますが、価格の高低が装用する方それぞれのきこえやすさに直結するわけではありません。
ご予算でカバーしきれない性能については、ご自身の補聴器の使いこなし方や周囲の方々のご協力でカバーしていくことが重要になります。
ご自身のきこえにとって必要な機能や性能を満たすことができる補聴器を選び、購入することが大切です。

投稿者プロフィール

髙橋 義和
髙橋 義和
認定補聴器技能者。30年に渡る補聴器メーカー勤務の経験をもとに、『距離も気持ちも近くて安心、信頼できる補聴器専門店』
として、住吉大社のほど近く、粉浜商店街にある補聴器専門店として日々精進しております。趣味はクラシックギター、特技は書道。